こいつ―――最低だな。
あたしを犯そうとして、挙句の果てそれが適わなかったから今度は成績を下げるだと?
しかも森本さんまで。
あたしは今更体育の成績であれこれ思わないけど、森本さんには影響がある。
あたしが唇を噛みながら体育教師を睨むと、
森本さんがつかつかと歩み寄ってきた。
バッ!
森本さんはあたしの前に進み出ると、ケータイを体育教師の前に突きつける。
『体育の授業も成績アップしたくないか?』
さっきの体育教師の台詞がケータイから流れ、
『結構です』
あたしの声も聞こえてきた。
どうやら動画みたいだ。
体育教師が目に見えてうろたえ顔を青くさせる。
「これを見たら先生が鬼頭さんにしようとしていたことがどういうことなのか、誰が見ても一目瞭然ですよね」
森本さんが声を低めて体育教師を睨んだ。
体育教師は森本さんの手からケータイを奪おうとしたが、森本さんはさらにケータイを体育教師の目の前に突きつけ、
「無駄ですよ。もうデータは久米くんのケータイに転送済みです」
あたしが久米を見ると、久米は少しだけ勝ち誇ったように口角を上げて楽しそうに腕を組んだ。
「そういうことです。新聞部に高く売るか」
久米が楽しげに言う。
「それともあたしの母に見せるか」
森本さんが後を引き継ぎ、
「回りくどいことをしなくても、校内サイトに載せたっていい。そうなれば先生懲戒免職だよね」
最後は久米が締めくくった。



