久米―――……それから森本さん……
何でこの二人が?
あたしはわけも分からず二人を凝視した。
「な、何でお前らが!」
体育教師がうろたえながらも、表情を険しくさせている久米と森本さんを睨んだ。
森本さんは、まるであたしをその体育教師から庇うようにぎゅっとあたしを引き寄せ、
久米はひたすらに体育教師を睨んでいた。
王子さま要素が多い久米の目は大きくて丸いイメージがあったけれど、こうやって見ると僅かに目尻がつりあがっている。
切れ長とは言わないけど、血統書つきのきれいな猫の目のように見えた。
その目を細めて眉間に皺を寄せ、その威嚇するような態度に体育教師がたじろいだように身を引いた。
「何をしていたんですか?」
久米がもう一度低く聞いた。
一瞬のまばたきすらしない、その強い視線は―――威圧的ではないのに、抗えない強いもの。以前梶に向けていたものだった。
「何をしようとした?」
久米が再度低く聞き、体育教師がまるで久米の視線から逃れるように視線を泳がせた。
「お、俺は別に何もしていない。き、鬼頭の片付けを手伝っただけだ」
抑揚を欠いた体育教師のいい訳も、久米は聞き入れないように肩を掴む左手にぐっと力を入れる。
きれいな手の甲に、若干不釣合いとも呼べる青白い血管が浮き出ていた。
「往生際が悪いですよ。鬼頭さんを襲おうとしてたくせに」
久米が低く言い、体育教師が目を開いた。
「言いがかりだ!俺は何もしていない!!」
体育教師が久米の左手を払おうとした。
さっきも思ったけど、こいつ結構力がある。
体格も久米よりがっちりとしているし。
「やめて!」
あたしは森本さんの腕を振り払うと、久米の前に躍り出た。



