岩田さんはよく喋る。
話題の芸能ネタ、ファッションや化粧なんかのお洒落について、最近できたケーキ屋さんの話etc
あたしもそれなりに乃亜とは喋るけど、岩田さんの話題は次から次へと出てきて途切れない。
元々自分から喋る方ではないあたしは、岩田さんの話に圧倒され、不器用に頷くことしかできなかった。
よく考えたらあたし、乃亜以外のクラスの女の子と普通に喋るのってこれがはじめてだ。
少し前に文化祭準備の居残りで喋ったけど、あのときはちょっとだったし、しかも周りに大勢居た。
ボールを拾い集めながら、岩田さんの話題が恋バナに変わった。
「久米くんてどんな子がタイプなのかな~、番号交換したいんだけど勇気でなくて」
と、見た目が派手なギャルの岩田さんからすれば、随分可愛らしい喋り口調に、あたしは思わず笑った。
いかにも慣れていそうなイメージはあったのに、スれてない純粋さがにじみ出ている。
相手が久米ってことに若干引っかかりはあるが。
「あ、ごめん!あたしの話ばっかりで」
と今更慌てたように口を押さえる岩田さん。
「今更だよ。大丈夫、あたし結構岩田さんの話聞くの好きだよ。ってかあたしの方がごめん。
あんまり女子と話すことなくて、うまく答えられないから」
「あはは~♪大丈夫だよ♪ってか『今更』ってはっきり言うね。鬼頭さんらしいっちゃらしけど♪」
岩田さんは明るく笑う。
岩田さんの笑顔に少しだけほっとした。
何て言うのかな……今までどうにも思ってなかったけど、喋ってみると意外と心地いい。
この岩田さんの雰囲気……顔や声とかじゃなく、居心地って言うのかな、誰かに似てる―――
あ、そうだ。
あいつ、美術バカ―――……もとい“とーや”だ。
あいつに似てるんだ。



