体育の授業が煩わしかった。


梶はUSBに書かれた内容を実行してくれただろうか。


そんなことばかりが気になって、時間がやけに遅く感じれた。


ピー…


ホイッスルが鳴って、全員が集められ、


「今日はここまで。解散」と言う言葉を聞いたときは、正直ほっとした。


面倒な体育の授業を終えて、生徒たちが賑やかな声を振りまいて帰っていく。


乃亜も何かと言い訳をしてうまく帰らせた。


しかし…


何なの、この転がったボールの量……


コートいっぱいに広がったボールを眺めて、あたしはため息をついた。


パスやレシーブの練習、ミニゲームなんかをやったから、あちこちにばら撒かれている。


仕方ない、さっさと拾い集めて片付けるか。


吐息をつきながら足元に転がったボールを拾うと、


「あたしも手伝うよ」


少し離れた場所で、岩田さんが同じようにボールを拾っていた。


あたしが顔を上げると岩田さんは照れくさそうに、にっと笑い、ピースサインを作った。


「いいの?」


あたしが聞くと、


「うん。でも今度代わりに勉強教えてね?」と岩田さんがまたも恥ずかしそうに笑う。


「こないださ~あたしテストの結果がヤバくて、数学と物理が赤点ギリギリだったんだぁ。


今更成績なんて気にしないけど、さすがに留年とかイヤだから」


なんて早口に言うけど、本当は素直にあたしを手伝ってくれる気持ちが表情からにじみ出ていた。