だけど



あたしだって万能ではない。


―――ストーカー犯人と接触する唯一の作戦。


久米の正体を暴いてやるのと、右門 篤史をあたしの目の前に引っ張り出すこと。


一気にカタをつけてやる。


だから尚更、どこか一つでも手抜かりがあったら、この作戦はパアだ。


ヘタしたら、すべてが失敗に終わる。





殺るか、殺られるか―――





あたしは黙って殺られない。




体育の授業は球技場でのバレーボールだった。


二人一組になって柔軟運動をしている最中に、二人してゆっくりと授業に参加すると、


「遅刻だぞ、お前ら!」


体育の先生が声を大きくしてあたしたち睨んできた。


地声が大きいから、球技場に大きく響いた。


高い位置にある窓がびりびりと振動しているようだ。


球技場は―――今度の文化祭で『白雪姫』を演じる場所なだけに、余計意識する。


「バツとして、お前ら二人ボールの後片付けだ」


体育教師は筋肉で盛り上がった腕を組んで、あたしたちを睨み、


あたしたちは揃って顔を見合わせた。


「……どうしよう…」


乃亜が困ったように口元に手を当て、あたしも考え込んだ。


次の休み時間に梶からUSBを乃亜に渡す手筈だ。


どうして今日は邪魔ばかり入るのだろう。


うまく行かない―――


こんな場所でつまづいていては、最終的な目的も果たせなくなる気がしてきた。


だけど弱気になってはダメ。


「大丈夫、片付けはあたし一人でやる。乃亜は体調悪いとか言って帰って。それで梶からUSBを受け取って」


あたしが囁くように乃亜を見ると、乃亜は小さく頷いた。