雅たち三人を数学準備室に行くよう促した。
彼女たちは言葉も少なめに駆け出していった。
あそこなら誰の邪魔も入らない。内側から鍵を掛け、ラックの奥に隠れてパソコンを見れば外から見られることもない。
それでも不安が払拭できずに、僕も表情を固くして職員室に戻った。
三限目を報せる鐘が鳴り、僕は慌しく準備をしてデスクの上から教科書を取り出した。
次は一年生の…商業科の授業が入っている。
教科書を確認しようとして、ふとデスクの上に目がいった。
白い封筒が置いてある。
宛名はパソコンで印字してあって“神代 水月様”と書かれていた。
同じ字体で学校の住所も記入してある。
手紙……?珍しいな。
マンションにはよくダイレクトメールとか光熱費なんかの請求書のたぐいが送られてくる。
個人宛の手紙を、それも学校に送ってきたことに若干の違和感を感じつつ、僕は手紙を裏返した。
差出人は無記入。
赤い薔薇の花のシールで封がしてあって
またも違和感。
だけど深く考えている暇は今はない。
授業がはじまっている。
僕は慌てて引き出しにその封筒をしまうと、
職員室をあとにした。



