「あ、そうだ……これ、君たちのUSB」


僕がおずおずと差し出すと、


「Good play.ありがとね」


短く彼女は言い、僕の手からUSBを抜き取った。


「情報処理室や他の教室のパソコンを使うのは止めた方がいい。まだ石原先生は疑っている様子だ」


「だけどどこで……」


梶田が不安そうに目をまばたいた。


「パソコンに繋げるタイプのものだし、変換機もないからケータイも無理だよ」


楠も考えるように目を伏せる。


「でも早くしなきゃ」


雅が考えるように唇を噛み、苛立ったように髪を僅かに掻き揚げる。


その瞬間、ふわりとヒプノティックプワゾンの芳しい香りが香ってきた。





やっぱり―――



雅の香りは―――凄く落ち着くんだ。





黒い髪の合間からたくさんのピアスが目に入った。


化粧けもなく、派手なお洒落をしているわけでもないのに、彼女の華やかな存在はいつも際立っていた。


そのピアスたちは彼女を一層惹きたてるように白い耳で輝いている。


最初にそのピアスを目にしたのは―――


僕はスーツのポケットから小さな鍵を取り出した。



「この部屋を使いなさい。僕のパソコンが置いてある」



数学準備室の鍵を


雅に差し出すと、彼女は大きな目をさらに大きく開いて、ゆっくりとまばたきをした。