雅が見せるあの強い視線は―――覚えがある。


射るように尖って、何もかもを凍らすほどの冷たい視線。


彼女の髪や指先からピリピリと…だけど静かに怒気が発せられているように思えた。


石原先生は目を開いて雅を見据え、何か言いたそうに口を開きかけた。


それでも石原先生が何かを言う前に、雅が石原先生を睨みながら声を出した。





「あたしは自分が疑われたことを怒ってるんじゃないよ。


梶や乃亜まで共犯にしたてあげて、


挙句の果て、





神代先生まで疑った―――」






雅の言葉が生徒指導室に響いて、石原先生どころか楠も梶田もそろって目を開いて彼女を注目している。




「あたしがA組の生徒より成績が良いからって、何でそんな発想になるのか分からない。


先生こそ安っぽい推理ドラマばかり見てるんじゃないですか?」


雅の嫌味に梶田が失笑を漏らし、石原先生が顔を歪めて梶田を睨むと、彼は慌てて顔を背けた。




「あたしがテスト問題を盗んだ?


あたしが売春してる?


その考えがバカ過ぎて笑っちゃうよ」




雅はそう言ったが目はちっとも笑っていない。


「ついでに言わせて貰うと、先生のお粗末な推理ドラマ風に展開するなら、文化祭の出し物のアイデアを盗んだのもあたしらD組の仕業だろうけど、


あたしたちはアイデアを盗んでない」


雅は楠をちらりと見ると、「そうだよ!」と言って楠は大きく頷き、


雅はポケットに手を突っ込んだまま僕たちの元に歩いてきた。