雅が珍しい血液型なのは知っていた。
それは去年の事故のときに知ったのだ。
失血の量が多く血液が足りなくて、病院のストック用血液も少なく、県の血液センターから急遽運んでもらった。
AB型Rh-
それは、赤血球にアカゲザル(頭文字をとってRh)と共通の血液型抗原がある事を言う。
赤血球に抗原A、B、Rh因子のいずれもない場合で、この血液型を持つ人間は2000人に一人の割合いだ。
「それって大丈夫なんですか?」
和田先生が僅かに顔を青くして、僕の手元にある用紙を覗き込んできた。
「まぁ今時は、世間が言うほど珍しい血液でもないですよ。ほとんどの病院では事故なんかに対応できるようストックがしてある」
「でも普通の血液とはちょっとワケが違うよね」
僕が検査結果の用紙を返すと、
「まぁなぁ。でもこればっかりはなぁ」
と、まこが困ったように首の後ろの手をやる。
まこにもどうしようもできない問題だし、あれこれ言っても仕方ないけど。
「とりあえずあいつは貧血ではなく、アドレナリンの影響で具合を悪くしてるってことだ。
あらゆる感情で興奮させないよう気をつけるだけで大丈夫だ」
それが一番厄介じゃないか。
ある意味、雅のように貧血持ちだった方がいくらか対処しがいがある。
(増血剤の投与とかで)
「それでも気をつけるには越したことがないが。
大量のアドレナリンとストレスホルモンの放出は、時に急激に心筋を弱める。
外部からの裂傷よりも、そう言った内部のことを考えた方がいい」
改まって僕を見据えてくるまこの視線に、僕は分けもわからず息を飲み込んだ。
しかし2000人に一人と言われる血液の持ち主が、
僕の受け持つたった40人弱のクラスに、二人も―――
これは偶然なのか



