まこが和田先生と僕の分のコーヒーを淹れてくれて、そして自分はいつもの場所に腰掛け、三人が輪を描いて向き合う形になった。


何から話そうか。


そう考えて、奇妙な沈黙が到来した。


「神代先生は鬼頭と付き合ってるんですか。雅って鬼頭 雅のことですよね。林先生は知ってたんですか?」


コーヒーに口を付けて、和田先生が口火を切った。


僕はコーヒーに口を付けず、温まったマグカップを両手のひらで包み込むようにして、それを見下ろしながら口を開いた。





「ええ。付き合っています。




半年ほど前から―――




まこも……林先生も、もちろん知っています」




まこは小さく頷いただけだった。


重大な告白をしているという自覚はあった。


なのに、口に出してしまうとそれは……“秘密”は思った以上に重い枷だったのか、緊張と言うよりも、安堵感の方が大きかった。


和田先生がどんな反応をするのか気になった。


もしかしたら何もかも校長や理事長に打ち明け、僕はすぐに教師を辞めさせられるかもしれない。


それでも、一度喋ってしまうと隠し事が後から後から僕の口から出る。


楠の自殺未遂からはじまって、彼女の事件を通して僕と雅が親密になったいきさつ。


雅が二年に進級し、担任になったのは偶然だったけれど、それはそれで良かったこと。


彼女への気持ち。深い愛情。


未来に対する考え。


全部を喋る間、まこは一度も口を挟んでこなかった。