すぐに男の体育教師に取り押さえられ、それでもまだ興奮しているのか美術バカは何事か怒鳴っていた。


珍し。あいつでも喧嘩とかするんだ。何かに怒ったりするんだ。


このときはそんな風にしか思ってなかった。




―――

――


体育が終わって制服に着替えている最中。


「さっきの―――くん…の喧嘩の原因だけどさ、あれ鬼頭さんらしいよ?」


同じように着替えをしならが女子たちがひそひそ喋りながら噂してる。


気にしない素振りで着替えをし、あたしは机の上に畳んだ制服を手に取った。


でも―――…あたし?


あたしが原因って何よ。


あたし、また何かした?


なんて眉をしかめていると、女子たちはあたしが噂話に聞き耳を立てていないと踏んだのか、噂話を続行させる。


「男子の一人が鬼頭さんの体操着姿見て、胸大きそうとか言ったらしいじゃん?


一度ヤりたいとか、何とか言って―――くんがキレたらしいよ?」


サイテーだな。男子のヤツ。


苛々と奥歯をかみ締めて、あたしは制服に腕を通した。


大きいかどうかは知らないけど、比べたことないし(でも、乃亜よりは小さいと思うけど)


でも、それを見て何でそう考えるんだよ、って思う。


このごろクラスではそうゆう話が横行している。


誰々がキスしたとかそれ以上したとか、自分は経験したとか未遂だとか―――男子も女子も、みんなそういう話をしている。


一番興味がある年頃だとは思うけど、あたしはまったくといって良いほど興味がなかった。


知識を持ってるから何?経験したから何?


だから人より早く大人になるって訳じゃないし、人より優位に立つわけでもない。


そんなことより数学の公式を解いてるほうがずっと楽しいし、ずっと身になるよ。




あいつも―――…美術バカも興味がなさそうだったし、もちろんあたしたちはそんな関係じゃない。



だけど