■Chairs.3



◇◇◇◇◇◇◇◇


―――もし、逆向きに回る時計が存在するのなら、あたしはこの時間に逆戻って、やり直したい。


一体どこから間違っていたのか。


時を刻む秒針と共に考えたい。


だけど、人間なんて間違いだらけだ。


ヒトは失敗して、過ちを侵し―――そこでようやく気付く。


―――そういう生き物。



水月が会いに来てくれた。


何もかも知ってて、それなのに危険を顧みず―――あたしを心配してくれた。


嬉しかった。でも、それと同時に早く彼の腕の中に飛び込みたいと切に思った。


だからその晩―――あたしは“罠”を仕掛けた。


すぐに食いついてくる可能性は20%程。可能性は低いけど、食いついてくるまで仕掛け続けるつもり。


長期戦になることを覚悟して、それでもこの可能性に賭けていた。


罠を仕掛けて、ベッドにもぐりこんだのが深夜の1時。


布団に入りこんだとき、覚えのある僅かな痛みが下腹部に走り、思わず顔をしかめた。


そう言えば―――……予定よりだいぶ遅れていたな。


不安や緊張でホルモンバランスが崩れていた、って言った方が妥当だろう。




そう、ただホルモンバランスが崩れているに過ぎないのだ。



だから、またあの変な夢を見た―――