ゆっくりと久米の首元に込めた力を抜くと、開放された久米は激しく咳き込み、森本が慌てて久米の下にかがみこむ。


「大丈夫!?」


ゲホッゴホッ


激しく咳き込んでいる久米の背中を、森本が撫でさすっていた。



「大丈夫か!?」和田先生も顔を青くして久米の両肩に手を置いている。


まこは、僕がまた暴れ出すかと思っているのか、後ろから僕を羽交い絞めにしたまま、力を込めたまま、


「何考えてるんだよ、お前は!」


大きな声で怒鳴り声を上げた。


僕はまこの質問に答えられなかった。冷めた視線で久米を―――久米ただ一人をひたすらに睨み下ろす。




何故こんなことをしたのか。後悔なんて一ミリもしていない。


ただ、どうしようもなく―――許せなかった。




まこに腕を拘束されたまま、僕は歯軋りをして久米を睨み下ろした。


久米はちらりと顔を上げると、またもあの不適な笑みをうっすらと浮かべた。


「久米ぇ!」


僕の怒鳴り声は人けのない暗い廊下に反響して、不気味に空気を揺らした。


僕が声を上げて、まこの腕を振り切ろうとすると、まこが僕の腕に力を込める。


和田先生と森本がびくりと肩を揺らして、驚愕の表情を浮かべた。


「和田先生!久米と森本を連れて、とりあえずここを離れてくれ!」


まこが背後から怒鳴り、和田先生は慌てて久米と森本を立たせると、


「とりあえず、来なさい!」


二人の背を押し、緊張の表情を浮かべながらも彼らを促す。






「久米っ!!雅に手を出すな!!



彼女に手を出したら―――許さないからな!」





もう一度叫ぶと、階段を降り始めていた森本、和田先生―――そして久米が同時に振り返った。