何を―――…言っているんだ。
何を―――
久米の中に、僕は普段彼に見ることのない猟奇的な何かを見た。
―――魂をも食い破るような残忍で冷酷で、非道な
悪魔のような―――
僕は一体今まで彼に何を見ていたのだろう。
誰からも親しまれ、常にクラスのリーダー的存在だった爽やかな久米は
今、ここに居ない。
いや、そもそも最初から存在していなかったのだ。
それを認めると―――あとは簡単だった。
最早、恐怖や疑惑とは別の感情が…猛り狂う何かが僕の中を支配し、それが暴れまわっている。
むき出しの怒気が僕を食い破り、外に出ようとしていた。
黙ったまま、拳を震わせる僕を横目に、久米はさらに続ける。
「だけど俺ならもっと上手く描けるよ?
鬼頭さんのきれいな血は、作品をさらに美しく斬新な何かをもらしてくれる」
久米の一言に、僕の最後の理性がプツリと切れた。
あっけなく。
最初からそれは脆く、ギリギリのラインで保ち続けていたのだ。
やめろ。
やめろ。
ヤメロ!!!
僕の中で、理性と言う名の感情が最後の制止を促している。
だけどそれは理性だったのか。それとも
雅を傷つける言葉を示唆する彼に対しての―――僕の本心だったのか。
僕は肘を振り上げると、久米の首元をめがけ腕に彼の首を捕らえた。



