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朝のホームルームで、雅も久米も……楠も梶田も―――そして、森本も
彼らに何の変化も感じられなかった。
出欠の確認で名前を呼ぶと、それぞれにいつも通り返事が返ってきて、その表情もいつも変わり無い。
動揺してるのは僕だけな気がして、居心地が悪い。
ただ、教室内はいつも以上に賑やかで、ホームルームだと言うのに文化祭のカフェで使うメニュー表や飾りつけなんかを堂々と作っている生徒が目立った。
出欠を取り終わって、五分ほどの空き時間ができると、
前の席の方で女生徒の岩田が、アップルパイの盛り付け例をルーズリーフに描いていて、後ろの女生徒に見せている。
咎めるべきだとは思うが、文化祭も近づいているし、まとまりのなかったクラスが一つになろうとしているのは良い傾向だった。
しかもさりげなく見たが岩田は結構絵…と言うかイラストを描くのがうまい。
「うまく描けてるね」
僕が彼女からルーズリーフを取り上げると、岩田はちょっと得意げに笑顔を浮かべた。
「これ?久米くんが描いたんです。上手じゃない?さっすが王子さま♪」
久米が―――…?僕はそのイラストをまじまじと見つめた。
久米の描いたイラストには分かりやすく説明も書いてあって、でもその字は男子生徒が書く字には見えなかった。
あまりに真剣に見つめていただろうか、岩田が
「先生?」と怪訝そうにしている。
僕は慌てて、
「シナモンか。いいね。こないだ食べたドーナツがリンゴ味でさ、シナモンが掛かってたけど、おいしかったよ。
リンゴ味のクッキーなんかもいいんじゃないか?」
さりげなく言うと、岩田はちょっと意外そうに目をまばたき、雅の方を目配せした。
「それは、鬼頭さんのアイデアなんです」
僕は驚いて目をまばたき、
当の雅は噂されてるなんて少しも気付いていない様子で、前の席の梶田になにやら話し掛けていた。
「あー…そっか。みんな考えることは一緒だね」
僕は曖昧に返し、岩田にルーズリーフを返した。
「先生」
ふいに声を掛けられ、僕も岩田も、彼女の後ろに座った女生徒も揃って声のした方を振り返った。



