「まぁ森本が犯人ってのはちょっと無理やり過ぎる推測だけど。
久米が鬼頭にちょっかい掛けてる理由も分からなくなるし、
―――だけど用心に越したことはない」
まこは低く言ってスヌーピーを指でちょっと弾くと、
至極真剣な目で僕を見つめてきた。
「用心?」
「ああ、気を付けた方がいいぜ?
あいつの生徒手帳の中に―――」
まこが言い掛けたときだった。
「おはようございます。こんなところで何の作戦会議ですか?」
いつの間にか
車のすぐ外に久米が立っていて、開いた窓からちょっと車内を覗き込むように身を屈ませていた。
僕たちは揃って目を開き、慌てて口を噤むと、
久米はまるで僕たちの考えを見透かすかのように、意味深に薄く笑い、制服のポケットに手を突っ込んだまま校舎の方へゆっくりと歩いていった。
久米は―――、一体どこから僕たちの話を聞いていたのだろう。
何を考えている。
校舎に向かう彼の華奢な背中を見送りながら、
僕はUSBをぎゅっと握った。



