「だって森本は女の子だよ?二年前のストーカーは男だ」
まこはため息をついて肩をすくめると、
「二年前のストーカーと同一犯だって言う確証はどこにある?あいつらがそう思い込んでるんだけじゃないか?」
「それは……そうかもしれないけど、でも女の子が雅をストーカーする?」
僕はちょっと顎を引いてまこを軽く睨んだ。
「あのなぁ、そもそもストーカーってのは“忍び寄る者”って意味だぜ?
相手に一方的に好意を寄せてる異性じゃなくても、恨みや嫉妬なんかで鬼頭に嫌がらせしてるって可能性だってある」
恨みや嫉妬―――
そんなことない。森本はそんな子じゃない。
僕は即答できなかった。
疑っているわけじゃないが、少なくとも動機はあるように思える。
『何であたしは鬼頭さんに勝てないんだろう』
『あたし、成績であの人に勝ったためしがない。勉強してる素振りなんてないし、いっつも授業中寝てるのに』
あのとき、森本は唇を噛みながら、忌々しそうにミラーにぶらさがったスヌーピーを睨んでいた。
そのスヌーピーが雅によってつけられたことを見抜いているように、射る様な冷たい視線。
僕が顔を上げると、
ルームミラーには、雅がつけたアロハスヌーピーがゆらゆらと振り子のように揺れた。



