根岸は同じクラスと思われる連中に喫煙の見張りを押し付けられていた。
抵抗することもなく……いや、抵抗したところで彼にもっと酷い仕打ちが待っているのかもしれない。
それが分かっているから、怯え、従い、彼らを庇う。
親から過大な期待を寄せられたあの子供たちが抱いている感情、それは―――
雅の売春行為と言う虚像をも創り出した。
いや、実際A組の子たちがそのような想像をしているかどうかなんて分からないけれど、
森本の母親でさえそうゆう噂が流れていることを知っていたのだ。
彼らが知らないはずがない。
雅は特進クラスの生徒たちを押しのけて、常にトップであり続けているわけだから。
あの噂は彼女の耳に届いているのだろうか。
耳に入れたところで気にしない性格だとは思うけど、でもやはり気持ちの良いものではない。
「あいつさ……タモリ…」
まこが、森本が走って行った方をじっと見据えながら、唐突に口を開いた。
「森本だろ?いい加減名前覚えてよ」
「どっちだって良いだろ?あいつって可能性ないの?」
まこの質問の意味が分からず、僕は目をまばたいた。
「何が?」
間抜けに答えたけど、まこは気にしていない様子で僕の方に視線を移すと、
「鬼頭をストーカーしてるヤツだよ」
考えも浮かばなかった突飛な考えに
「は?」
僕はまたも間抜けに返した。



