HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~




まこの言葉は特に深意があるとは思えず、僕は軽い調子で、


「あー、まぁ女の子は急に大人になるよね。年頃だし、やっぱりお洒落したいとか普通でしょ」


と笑った。森本なんてまだ可愛い方だ。


今日びの女子高生は大人顔負けのメイクをして、下着が見えるぎりぎりの短いスカートで登校するのが当たり前になっている。


校則では一応化粧の類いは禁じられているが、誰も咎める者もいない。


何故なら、ほとんどの女子生徒がそうだからだ。


あれこれ抑えつけて制限するよりも、のびのびと生活させる方が今の生徒には合っているのかもしれない。


「僕たちの高校時代とは違うんだよ」


時代の流れと言うものは怖いものだ。


僕たちの高校時代では派手に化粧を施している女生徒の方がまだまだマイノリティー(少数派)だった。


ゆえにそう言う生徒は悪目立ちする。


“不良”とか“ギャル”とかレッテルを貼られ、教師たちからは嫌われていたが、生徒たちからは一目置かれる存在。


それが今は当たり前の光景だ。


でも同時にその当たり前の光景の高校に、まるで一角だけ切り取ったような異質で、奇妙とも言える集団は存在する。


それが特進クラス。A組だ。


雅は単に“ガリ勉たち”なんて言ってたけど、僕にはそう思えない。


同じ生徒ではあるが、彼らはあの狭い一教室で、独自の世界を創り出している。


勉強することになんの抵抗を覚えないのか、ひたすら盲目に勉強に励む。


いや学生だからその行動こそが、真の姿であるけれど。


だが表向きは勤勉に励む生徒たちの集まりだが、彼らもやはり上下関係というものはある。


その上下関係は成績の優劣なのか、それともクラスでの立場てきなものか。





あの狭い世界で―――彼らの……いや、根岸の逃げ場はあるのだろうか。