すかさずまこの手が僕の首に伸びてきて、僕はその手を乱暴に払った。


空いていた膝で勢いをつけ、まこの腹に命中させると、まこが小さく呻いて体を折った。


反動をつける勢いで体を捻りながら素早く起き上がると、僕はまだうめいているまこの胸ぐらを掴んだ。


まるで容赦がなかった。


どこに自分にそんな力があるのか謎なぐらい、力強く襟元を締め上げる。





「雅に手を出すな!彼女に何かしてみろ!!


例えまこであろうと―――僕は絶対に許さない」






まこは締め上げられた首を緩めてくれと頼むように僕の手首に軽く叩き、


「……ジョークだ……バカ」


ジョーク……


僕の手からするりとまこの襟が離れると、まこは激しく咳き込んだ。


「ご……、ごめん!」慌ててまこの元にかがみこむと、まこはまたも咳き込んだ。


ゲホッゴホッ


しばらくの間咳き込んでは喘いでいたが、呼吸が整うと、


よっぽど痛いのか、あるいは苦しかったのか、腹を押さえながらちょっと苦笑を漏らした。


目だけを上げると、



「やりゃできるじゃん。


お前の弱点はそれだよ。優しすぎるってとこ。


気を許した相手にはとことん弱いってとこ。


敵は敵だ。容赦なんてしてられないし、するな」




例え久米が何を言ってこうよとな―――



あいつにも絶対心を許すな。






まこはそう続けて、力が抜けたようにぐったりとソファの背にもたれかかった。


まこは―――わざと僕を挑発した。


僕を怒らせるために。


僕に現実を思い知らせるために。





気を許すな―――


気をつけろ。





まこの言葉を反芻してベッドにもぐりこみ、それでもやはり雅のことが心配で眠りは一向にやってこなかった。