再びパソコンに向かっている途中、ケータイが鳴った。
電話着信を報せる着メロが流れて、あたしは目を細めた。
着信は―――
水月からだった。
「―――…はい。もしもし」
電話に出ると、
『雅?もう寝てた?』と相変わらずふわふわとしたリズムで問いかけがあった。
良かった。
この様子じゃ水月は何も気付いてないみたいだ。
「ううん、起きてた。どうしたの?」
『いや、特に用はないんだけど…』
特に用がなくても、声を聞きたい……そんな風に思うのって―――好きだからだよね。
あたしも声を聞きたかった。
あなたの声を―――
好き、だから。
近くでワンワン犬が鳴く声が聞こえた。電話を通して…
『こら、ゆず。ちょっとじっとしてて』
水月がゆずを叱ってる声が聞こえる。
ゆずも元気そうだ。良かった―――
ワンワン―――
あたしは窓もカーテンも締め切った窓に顔を向け、目を開いた。
ゆずの声が―――すぐ近くで聞こえる……
すぐ近く。
あたしがカーテンを開けようとすると、
『開けるな』
水月が声をちょっと低めて言い放った。



