―――夜、一人の家でパソコンに向っていたあたしは、水月へのラブレター(?)を書き終えて、手を休めた。


バカみたいだ…こんなこと。


送る宛てもないラブレターを書くなんて。


笑っちゃう。


自嘲じみて笑みを浮かべて、あたしは気持ち切り替えた。


「さて。愛の告白分はここで一旦切り上げ。


そろそろ仕掛けをしないとね」


USBメモリを取り出して、あたしはパソコンに繋げた。


カタカタカタ……


暗くした部屋にパソコンのキーを打つ音が響き、あたしの顔をデスクトップの光が青白く照らし出す。


さっき調べてみた。あの“ストップ少年犯罪”のポスターの端に書かれた事業所名。


何の変哲もない職業斡旋事業所だった。内容も公共の職安と変わらない。


おじさんは役所と言ったからNPO(特定非営利活動法人)かと思ったけど、一般企業だった。


だけど何か引っかかる。


あたしはその企業名を頭に留めておいて、とりあえず仕掛けの方に掛かった。


一通り入力して再び手を休めると、キーボードのすぐ脇に置いてある雑誌を取り上げた。


レジャースポットなんかを掲載してある雑誌で、近郊の遊び場の紹介や食事をするお店が載ってる。


パラパラとめくって、いかにも女の子の好きそうな店を適当に眺める。


そのうちの一つに見覚えがあった。


確か保健医のマンションの近くだ。店はパリをイメージしてるのか、いかにも小洒落た外観をしていて、ケーキなんかの写真も掲載されている。


しかもこのお店のウリは


しっとり甘いアップルパイだった。


仕掛けるお店としてはおあつらえ向きだ。






「ここなんていいんじゃない?」






あたしはお店の掲載ページを赤いペンで大きく囲った。