暗い闇の中で、二つの目があたしを見下ろし捉えているのが分かった。
無言でじっとあたしを見つめて、こちらもその視線に無言で応えた。
どれぐらいそうやって見詰め合って…いや、にらみ合っていただろう…
あたしは両手を制服のポケットに突っ込むと、男を見上げて目を細めた。
「はじめまして。
おにーちゃん」
あたしが挑発するように薄く微笑むと、
男は虚を突かれたように一瞬唇を引き締め、だけどすぐに口元が僅かに緩んだ。
口角を僅かに上げると、何かを呟いた。
「これ以上首を突っ込むな。
深入りすると」
死ぬよ―――?
遠く……しかも以前に一回しか聞いたことのない声。
だけど忘れたりはしなかった。
その気になれば記憶力はいいんだ。
男は―――
いや、右門 篤史は笑顔を浮かべたまま背を向けて、
闇の中に消えていった。



