右門……いや、今は藤岡を名乗っているが、篤史はやっぱり“あっちゃん”に間違いない。
そらとぼけたって無駄だよ。
人の良さそうなおじさんは、右門 篤史の顔を見せてすぐに合点がいったようだった。
あのおじさんは、右門 篤史があたしと会おうとしない理由も、単なる家庭のいざこざを引きずってるっと思ってるからだろう。
それにしても対応が早い。
あたしが会いに来るのと分かっていたに違いない。
その事実も、あたしの考えを裏付ける証拠の一つ。
これで久米との繋がりが―――できた。
右門 篤史は間違いなく、二年前の事件に関わっている。
そしてその男に現段階で接触を図っている久米。
二人が何を企んでるのかはまだ分からない。
だけど真相に近づきつつある。
カタンっ…
頭上で小さな物音がした。
丁度事務所の二階部分だ。
あたしが顔を上げると、引き戸の窓がゆっくりと開き、窓付近に男が立った。
照明を落とした薄暗い部屋で、男の口から上が見えない。
でも少しだけ見えた部分で、その男がまだ若いということが分かった。



