午後も17時―――…
日が傾きかけて、長谷川製鉄所の灯りと傾いた陽の光が混ざり合い道路を、薄紫のちょっと幻想的な色合いを染め上げていた。
あたしは長谷川製鉄所をちょっと離れた場所から見上げた。
灰色の工場からは所々の明かりと、機械音が漏れていて、この工場がまだ稼動していることが分かる。
「ねえ、雅…ホントに行くの?」
乃亜が心配そうに工場を見上げ、あたしは無言で頷いた。
「だけど危険極まりないぜ。いくら今はまだ工場が稼動してるからって、ストーカーなんてするヤツに正常な精神があるとは思えない。
何しでかすかわかったもんじゃねぇよ。
確かめたいんなら俺が行く」
梶は右門 篤史がストーカーの犯人だと決め付けている。
「大丈夫だよ。ここに居る右門 篤史はあたしを傷つけたりしない」
確信はある。
「それにあたしは直接この目で見たい。本人が出てこなくても、何か分かるかもしれないし」
あたしは意を決して歩き出した。
二人が心配そうにあたしの後ろ姿を見送っていたことに気付いてたけど、あたしは振り返らなかった。



