“あっちゃん”
“カフェで楽しそうに喋っていた―――女”
『これ以上邪魔したら、次はただじゃ置かないよって、警告したんだ』
久米の楽しそうに笑ったあの笑顔。
中学のクラス名簿や卒業写真に久米の姿はなかった。
何故―――……
『俺は君のことを何でも知ってる―――』
何でも。
「何でも……知ってるわけだ…」
あたしはぽつりと呟いた。
「は?」
梶が目をまばたき、あたしを怪訝そうに覗き込む。
やっと…
やっと、久米の正体が掴めつつある。
それは点と点が一つの線に繋がるように。ううん、それを繋げると一つの円を描く。
「アポロニウスの定理」
「は、何…」
梶は益々怪訝そうにして「お前大丈夫?」とあたしの肩に手を置いてきた。
明良兄が言った通り、あたしは複雑に考え過ぎていたようだ。
事実は常にあたしの始点に戻ってくる。
それは円を描くように。



