でもどこで―――……
「あ・き・ら・へ」
すぐ近くで乃亜は声を口に出して、ピッピッとケータイでメールを打っている。
キー操作音があたしの耳朶を打ち、考えを妨げようと不快に響いた。
「きょ・う・は、む・か・え・は……」
なんて打ってる乃亜。
その声と連動して、ピ・ボ・パ・ピ・ピ…とプッシュ音が鳴る。
明良兄―――巻き込むつもりはなかったけど、巻き込んでしまった。
申し訳なさと後悔が押し寄せ、あたしはため息を吐いた。
ピ・ピ……
息を全部吐ききらない内に、あたしは息を止めた。
耳を打つケータイのキー操作音。
「どうした?鬼頭」
梶が怪訝そうにあたしを覗き込み、あたしは
「しっ!」と言って人差し指を口に当てた。
耳を澄ます。
遠くから聞こえてくる運動部の掛け声。
廊下を僅かに響く人の声。
ブラスバンド部の楽器の音も聞こえてくる。
そして、ケータイのキー操作音。
そうゆう………こと…
あたしは目を開いて固まった。



