気が急くのか、あたしの歩調は速くなった。
早足で昇降口に向かうと、
「雅、ちょっと待って。明良に迎えに来てもらうように言ってあったから、あたしメールだけ打つ」
と、乃亜が慌てて鞄の中からケータイを取り出し立ち止まった。
「楠先輩も心配だよな。鬼頭は狙われてるし、乃亜ちゃんは久米に脅されたし」
梶が心配そうに乃亜を振り返り、あたしは確認のために梶を振り返った。
「梶、久米から脅されたことは明良兄に言わないでよ?そうじゃなくてもお兄は血の気が多いんだから」
「分かってるよ。でも久米ってホント頭イイって言うか…悪知恵が働くって言うか、何て言うか姑息だよな。乃亜ちゃんを狙うなんて」
「久米はあたしたちのことを知り尽くしてる。あたしが乃亜やあんたを大切にしてることもね」
「……大切」
梶は顔を赤らめた。
あたしはそんな梶の照れてる顔を無視して、考えた。
久米は―――知り尽くしてる。
一体どうやって調べ上げたのか。
多少調べればあたしと水月の関係を知ることは不可能じゃない。
だけど、明良兄を使って水月を陥れようとした事実を何であいつが知ってるの。
さらには保健医を巻き込んだことも知ってたし、
水月と保健医……あの二人がそんなこと喋るはずもないし。
ましてや梶はあたしのやってたことのほとんどを知らない。
乃亜は眠ったままだった。
明良兄は―――久米と接点がない。
でも
どこかで情報が漏れてるのは事実だ―――
故意じゃないにしろ、うっかり喋るには重過ぎる事実。
一体誰が―――



