“あっちゃん”
カフェで楽しそうにしていた―――“女”?
ちょっと待って…
あたしは今までこの噂の人物が同一人物で、しかも“女”だと思っていた。
あたしは隣の演劇コーナーで本を探している梶と乃亜のところまで歩いていって、
「クエスチョン。“あっちゃん”から連想される名前をいくつか挙げよ」
あたしが真面目くさった顔で二人を見ると、
梶は「はぁ~?どうしたんだよ」と笑い出し、乃亜も不思議そうに目を瞬いていた。
「とにかく考えて。何でもいい」
「それって久米くんの噂の彼女??」
事情をいち早く察知した乃亜が顎を引いて、まばたきをした。
「そうかもしれないってだけ。考えて」
あたしがもう一度真剣に言うと、二人は真面目に考え出した。
「アツコ」梶が言って「あっちゃんて言えばAKBの前田敦子だろ♪」
なんてにこにこしながら顎に手を掛ける。
梶には期待できなさそう。
その隣では乃亜が真剣に首を捻り、次々と思い当たる名前を口にした。
「アヤカ。アサコ。アイリ……」
「アミ。アイ。アユ……だめだ!多すぎだよ」
と、梶は根を上げて両手を宙に投げ出した。
あたしは両手をポケットに突っ込みながら二人を見据えると、
「アツシ」
と一言呟いた。



