ほとんど直感でその本のページをめくると、予想した通り最後のページの貸し出しカードポケットに入っているカードに久米の名前を見つけた。


ビンゴ


ちょっと笑ってページをめくったけど、そこにめぼしいものは書いてなかった。


様々な毒についてつらつらと語ってあるだけ。


やっぱりあいつはこの本を演劇の参考にするだけのために借りて、そこには他意がなかったみたい。


諦めてカードを戻そうとしたとき、久米の名前の上に“2-A 堤内 ひかり”と名前が綴ってあって、あたしは目をまばたいた。


堤内……って、あのあたしに突っかかってきた女だよね。


そう言えば…


前にクラスメートの岩田さんが「堤内は久米くんのこと好きっぽい」って言ってたけど、あれもあながち外れじゃないんだな。


日付を見ると貸出日は二日前で、返却日は今日になっていた。


堤内さんも…いや、その他大勢の女も久米のあの爽やかっぷりに騙されてるんだよ。


確かにかっこいいとは思うけど、腹の底で何を考えてるのかまったく見えない。


どのみちあいつ彼女居るって噂だし。


(本人否定してるけど)


でも確かに岩田さんは―――



『“あっちゃん”って呼んでて、すっごく楽しそうに喋ってた。


あ、あと『仕事いつ上がる?そっちに行くよ』みたいなことも答えてた。年上かぁ。


それにね隣のクラスの子が休みの日、偶然久米くんと女の子とカフェで楽しそうにしてるのを見たって』




『彼女じゃないよ。


でも、彼女ねぇ―――…そんな風に思われてたんだ』




久米の言葉を思い出して、あたしは再び本のカードを手に取った。