「どうしたんだよ」
急に立ち上がったあたしを怪訝そうに梶が追いかけてくる。
「久米―――あいつもこの図書室で本を借りてないだろうかなって思って」
「借りてたとしても俺たちが思いつくキーワードの本を見たって、今更だろ?そもそも思いついてたんなら、とっくに解決してるよ」
そう言いながらも梶は大人しくついてくる。
「あんたならね。でもあたしは知ってる。
あいつが“美術バカ”だったら―――?
画集なんて借りてるかもしれない」
美術書なんて値が張るものだ。
よっぽど気に入った画家の本で無い限り買うことはないだろう。
でも少し気になったら―――?
気軽に借りれて種類が豊富な図書館に来るよね?
あたしは美術書の陳列されている少し大きな棚に足を向け、梶も隣に並んだ。
すぐ近くに乃亜もついてきて、あたしたち三人は美術書を漁った。
だけどどの本を開いても、図書カードに久米の名前はなかった。
そう簡単に行くわけないか―――……
なんてため息を吐き、あたしは違う棚に足を向けた。
薬化学なんかの本が陳列されている―――“サイエンス”のコーナーだ。
あいつは、白雪姫のストーリーを作る上であたしの話を参考にしたと言ってた。
だけど、自分でもきっと勉強したはず。
何ていうか……些細なことでも気を抜かないタイプなんだよね、あいつ。
なんて思って並べてある本の列を指でなぞって、あたしはある場所で手を止めた。
“毒”と表された一冊の本。



