「楠先輩に言いつけて、ぼっこぼこにしてもらおうぜ」
なんて鼻息荒くしている梶を、乃亜は本気で止めた。
「だめだよ。今騒ぎを起こすわけにはいかないんだから。結果的に未遂だったから…あたしは大丈夫」
弱々しく声を搾り出し、今にも泣き出しそうに再び表情を曇らせて口元を押さえた。
「乃亜の言う通りだよ。今は下手に動けない」
だけどこのまま動かないままで居るわけにはいかない。
それにやられっぱなしでいられるほど、あたしは大人しくない。
必ずやり返してやる。
―――色々事情を聞きたくて、とりあえず人けのない図書館に来たわけだけど―――
本を読むつもりもないし、とりあえずあたしはノートを広げた。
ここでひそひそお喋りしてると、司書さんに追い出されそうだったから。
とりあえず勉強でもするフリぐらいしておかないと。
あたしはノートにそれぞれの関係図と関係位置を描いた。
今のところ分かってるのは、
久米が関係してるってことだけ。
あたしはそもそも久米のことよく知らない。
転校してきた理由や、右手に怪我を負ってることぐらいしか。
そんなことを箇条書きにしてるときだった。
ガタガタっバサッ…
派手な音がして、顔を上げると、
A組の根岸が床に何やら本を落として、驚いたように目をぱちぱちさせ突っ立っていた。



