■Chairs.1



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「……雅ったら、まったく無茶して…」


人けの少ない図書室の一角に座って、乃亜があたしの手に絆創膏を貼ってくれていた。


乃亜の手が僅かに震えていて、さっきのショックからまだ立ち直れないだろうことが分かった。


「でもキセキだな。ケータイは電池パックが壊れただけだぜ?」


と梶はあたしのケータイをしげしげと眺める。


「あたしが久米ごときの為に、ケータイを本気で壊すと思う?」


なんて目を細めると、梶は呆れたように苦笑いを漏らした。


「……怖かった…雅たちが来てくれて…本当に良かった」


乃亜があたしの手をぎゅっと握って、俯いた。


乃亜………


「乃亜…ごめんね。酷い目に遭わせて」


あたしが乃亜の小さな白い手を握り返すと、乃亜はゆっくりとかぶりを振った。


「ううん。雅のせいじゃない。でもあれは忠告だったんだよ。これ以上邪魔するなって」


弱々しく乃亜が声を搾り出し、よっぽど怖かったのだろうかぎゅっと目を閉じた。


その痛々しいまでの様子を見て、梶がちょっと眉を寄せると、




「それにしても久米!あいつ何考えてんだよ!!


乃亜ちゃんにちゅーを迫るなんて!!」



と拳を握った。




“ちゅー”ってとこに迫力が半減するが、久米がやろうとしてたことはそうゆうことだ。