「白雪姫―――」


僕は唐突にその考えを口にした。


「は?今度はおとぎ話かよ。お前、鬼頭がストーカーされてるって聞いておかしくなったか?


ま、気持ちはわからんでもないがな。


俺だって千夏がそんな目に遭えば…」


なんてぶつぶつ言ってるまこの言葉を遮り、僕はまこに向き直った。


「違うよ。白雪姫の劇をやろうって言い出したのは久米だ。


そしてヒロインを雅に推薦したのも久米」


「……それがどうしたよ」


「分からないの?魔女に狙われた白雪姫は、七人の小人に守られるんだ」


「そりゃ分かるけど…ってかそれが何?」


「七人。雅のほかに七人居るんだよ。この裏には」


まこが顎を引いて「考えすぎじゃないか?」なんて疑いの目で見上げてくる。


だけど僕の続きの言葉を聞きたがっているようでもあった。


「楠のあの文面からすると彼女もその内の一人に数えられてるだろう。梶田も、僕に『久米には気をつけろ』と忠告してきた。だから事情を把握してると思って間違いない」


「楠を味方に付けたのなら、当然、二年前当時隣に住んでいた楠 明良も含まれるよな」


まこは最初のうち話半分に聞いていたが、やがて神妙な面持ちで僕を見つめてきた。



「それから、まこと僕……あと一人は……?」


僕が考えをまとめるために、リビングをいったりきたり。


そのあとを相変わらずとことこついてくるゆず。


ゆずが


「ワン!」


と、小さく鳴いて僕とまこは思わず顔を見合わせた。