□Forest.12



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保健室の丸椅子に腰掛けた楠はしばらくの間、泣き止むことがなかった。


しゃくりあげる中、僕やまこが何を聞いても、ただ首を振るだけ。


久米と何があったのかを頑なに語ろうとしない。


益々、あの場に残してきた雅が心配だったが、今は彼女を信じるしかできない。


「梶田、君は知ってるんじゃないか?


鬼頭と久米、何かあったんじゃないか?」


僕が質問する相手を変え、ついてきた梶田を見ると梶田も困ったように首を横に振った。


結局、それから数分後、楠は落ち着いた。


その頃合を見計らって、雅が保健室の扉を開いた。




彼女は、何事もなかったようにいつもの冷静さを取り戻して、しっかりした足取りで僕の元へ歩いてきた。


「…色々ご迷惑をお掛けしました。もう大丈夫だから。あたし、乃亜を連れて帰ります。


梶も。一緒に帰ろ?」


僕たちに小さく頭を下げ、梶田の方を見ると梶田は慌てて椅子から立ち上がった。


「お前、大丈夫?」


僕の気にしていることを、梶田の方が先に聞いてくれた。