「あー…いや、同じ実行委員だし、しっかり者の君と久米がクラスを引っ張っていってくれれば、と思ってるんだが」
と、僕は取り付けたように慌てて言った。
「鬼頭と梶田はやる気なさそうだし」
ごめん…雅。本当はそう思って……たりするケド……
「久米くんて本当にリーダー性がありますよね。クラスのみんなも久米くんが言ったら、みんな言うこと聞くし」
森本が感情のない目で淡々と言った。
表面上ではそう思うことにする。でもあんまり関わりたくないとその目が物語っていた。
森本はちょっと考えるように頭をかしげると、少し顎を引いて探るようにこちらを見てきた。
久米の話題を出すのは間違っていたかな…
変に疑われるのも良くない。
「気にしないで」と続けようとしたが、
「……あたし、あんまりこういうこと言いたくないんでけど、久米くんがA組の堤内さんに、今回の文化祭の件喋っちゃったんじゃないかって、思ってるんです…」
返って来た言葉は予想に反したものだった。
「―――え?」
「……堤内さん、久米くんと仲がいい?ってわけじゃないと思うけど、久米くんのこと好きっぽいし……久米くん誰にも優しいし、何かの会話の端に口が滑っちゃったんじゃないかな…って。
あ…でも、久米くんのこと好きだったらアイデア盗んだりなんてしない……か。
すみません、変なこと言って」
森本はどこか消化不良の表情をして、今度こそ小さく一礼すると部屋を出て行った。



