それは―――あんまり存在感がないって言いたいのかな…


なんてちょっとショックを受けるも、森本は慌てて顔を上げた。


「ち、違うんです!あのっ!


先生は本当に…あたしにとっては月みたいな人で、あたしの暗かった道をいつも照らし出してくれるんです」


森本の言葉に今度は僕が面食らった。




「だけど水に映った月は―――……すくっても、すくってもあたしの手からすり抜けて零れ落ちちゃう気がして。


先生は、優しいけど、だけどとりとめのない実体のようにふわふわとしてる先生を、誰も手に入れられない気がする」


………


―――正直、何て返せばいいのか分からなかった。


そんなこと言われたのがはじめてだったから。


でも


「ふわふわしてる……かなぁ」


う゛~ん…と小さく唸って僕は腕を組んだ。


「え!いえっ!変な意味じゃなくて」とまたも森本が慌てて手を振る。




「……なんて言えばいいんだろう。…あの…ごめんなさい…あたし変なこと言ったわけじゃないんです。


先生は何て言うかみんなから人気があるし、みんな平等に可愛がってくれるけど、


時々……先生の中で特別な生徒っていないのかな…



なんて気になって……」






特別な生徒―――……