え………?
思わず目を開くと、森本は気にしていないのか、僅かに髪を掻き揚げて
「……心配してくれてたんですね。…ありがとうございます…」とはにかみながら笑った。
嗅ぎ間違い―――…じゃない、確かにこの香りはヒプノティックプワゾンだ。
僕は鼻が良い方なんだ。
香りはヒプノティックプワゾンだが、でもほんの僅か雅の纏っているものと違う気がした。
雅のは、何ていうか…もっとしっとりと落ち着いていて、でもその中に爽やかさや甘さを含んでいる。
「森本……香水か何かつけてる?」
探るように聞くと、森本がちょっと虚を突かれたようにびくりと肩を震わせ、それでもすぐに
「……はい。ちょっとだけ…」
と、はにかみながら笑った。だけどすぐに怯えるようにまばたきをして
「ダメ……でした?」とおずおずと聞いてきた。
「いや、だめじゃないと思うよ。校則にも香水をつけてくることが違反とは書かれていないし」
なんて曖昧に返すと、森本はまたもはにかみながらちょっと笑った。
だけどすぐに考えるように僅かに目を伏せると、
「先生の名前ってきれいですね。何か意味ってあるんですか?」
と聞いてきた。



