僕の出したコーヒー入りのマグカップを、森本は丁寧な手付きで包み込むとそっと口を付けた。


「……おいしい…」


吐息のような声に、僕は思わず笑った。


「ただのインスタントだよ。森本の家でいただいたお茶の何分の一かの値段だ」


なんて的外れなことを言ってしまって、僕は慌てて空咳をした。


「ところで最近どう?お母さんとはうまくやってるかな?予備校は行ってる?」


「……予備校は…たまに休んで、お母さんとはあんまり喋ってない…」


森本は消え入るような声を搾り出して、探るように目だけを上げた。


真正面から見る森本は、少しだけ顔色が悪かった。


まだ具合悪いのだろうか。昨日保健室に運ばれて、今はまだ血液検査の検査結果を待っている最中だった。


まこ、は森本に特別悪そうなところは見えないけれど、何かあったら報せると言ってくれた。


「もう一度お宅に伺ったほうがいいかもしれないな。ところで、体調はどうかな?昨日はゆっくり休めた?」


僕が聞くと、森本ははっきりと分かる驚きを浮かべて勢いよく顔を上げた。




その瞬間……香ってきた。










ヒプノティックプワゾンが―――……