「…とにかく久米には気をつけろよ。俺も気をつけてるけど、それ以上に…」


梶田はしつこいぐらいに言って、そして慌てて口を噤む。


僕の後ろを見てぎょっとしたように梶田が目を開いて、


「…話はそれだけ。何か先生の後ろの背後霊に呪われそうだから帰る」


くるりと踵を返した。


背後霊…?そう思って振り返ると、保健室の窓にへばりついて、まこが僕を見下ろしていた。


一段高い場所から睨みを効かせて見下ろす姿は…


まこ……その格好ちょっと怖いよ…


なんて苦笑を浮かべていると、


ガラッ…窓が開いて、まこが顔を出した。


「まぁた、あのクソガキは!今度はお前に何を言いにきたんだ?」


と、まこは梶田が去っていった方を忌々しく睨んでいる。


「別に何か言われたわけじゃないよ。ただ、雅と仲良くしろよって言われた」


僕は苦笑いを漏らしてまこを見上げると、


「喧嘩でもしてんの?」と、まこがニヤリと笑う。


「あの変なクマもきっと呪いのクマに違いねぇ。仲直りに見せかけて、“死ね”ってメッセージが入ってんだぜ、きっと♪」


なんかまこ、楽しそうだね。


「喧嘩してないし、あのクマはゆずに、だよ。大体雅が呪いなんて回りくどいことする?


それよりも薬品室の薬品を盗んで、クッキーなんかに混ぜた方がよっぽど効果的だし、彼女らしいよ」


あはは、と笑い声を漏らして…


ん??クッキー?


そう言えばアフロのクマと一緒にクッキーが入ってたような…


「あはは…」


僕の力ない笑い声は青空に吸い込まれていった。