―――その生徒は梶田だった。


梶田はちょっと呆れたように目を細めため息をつくと、窓際の席で楠とお喋りをしている雅の方を気にしながら、


「ちょっと話あるんだけど」


と、小声で言ってきた。


梶田の話と言うやつは、どうやらここではマズいらしい。


僕は素直に頷くと、何でもないふりをして教室の外に出た。


そのすぐ後に、やっぱり後ろを気にしながら梶田がついてくる。


校舎裏の一角―――丁度保健室の窓の下辺り……


僕が以前梶田に連れてこられた場所まで、またも引っ張ってこられ、





「先生、鬼頭とはどうなってんの?」




と、またも直球に聞いてきた。


梶田はいつもそうだ。いつも突進あるのみ。イノシシみたいにまっすぐ懐に突っ込んでくる。


でも僕は何を考えているか分からない久米よりも、こうゆう生徒の方が好きだったりする。


ちなみに梶田は僕たちの関係を知っている数少ない生徒の一人だ。


「どうって。変わりはないけど。あ、将来てきなことは彼女が卒業したらはっきりさせようと想ってるよ」


暗にプロポーズしたい、と言外に含ませて僕は梶田をまっすぐに見た。


「そうゆうことじゃねぇよ!何て言うか、仲良くやってんの?」


苛立ったように聞かれて僕は面食らった。


意外だった。梶田に心配されるような仲に見られていたってことだ。