□Forest.10



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数学の時間―――


久米は雅の机に自分の机をくっつけて教科書を見せてもらっていた。


久米が明らかに僕を挑発しているのは確かなことだった。


もはやここまで来たら、それが想像の範疇を超えていることは確か。


でも何故―――……


久米は僕たちの関係にやっぱり気付いているのだろうか…


やはりマンションで久米が僕の部屋を見上げていたのは偶然ではなかったのか。



―――公式の説明をして振り返ると、久米は、雅の手を握っていた―――


ように見えた。


本当に視界の端に一瞬だけ捉えた光景だから自信はなかったけど。


久米の手から雅の手が慌てたように遠ざかっていくのを、久米は名残惜しそうにしているのを見てそれが確信に変わった。


見かねて楠が助け舟を出してくれたようだ。


雅の気持ちを疑うつもりはないが、それでもやっぱり気持ちのいいものではない。


不快な苛々が僕を満たし、授業中だと言うのに我を忘れて久米に怒鳴りたいのを何とかこらえ、


その後はなるべく彼女から目を離すことなく授業を進めた。


雅は………時折、心配したような視線でちらりと僕を見てくる。


雅は僕が彼女に怒っているのだと勘違いしているのだろうか。


いや。




怒っているのは確かだが、怒りの矛先は久米だった―――



以前、雅はまこともトラブルとは言えキスしたことがある。


あのときもやはり言い知れない怒りを覚えたが、今はそれ以上だ。


僕の中で行き場の無いたぎった怒りが、僕の体を食い破ろうと暴れている。