こいつ―――……あたしのこと挑発してる。
あたしの額を嫌な汗が浮かんだ。
誰かに助けを求めるつもりで後ろの…乃亜の方を振り返ろうとして、やめた。
ここで変な動きをしたら、久米に手を握られていることが水月にバレる。
弱みを握られているとは言え―――こんな場面を見られるのは絶対にいや。
だけど―――
熱を持ったように熱い久米の手があたしの体温を温めるかのように、じわじわと侵食してくるようで、あたしは―――
気持ちが悪かった。
水月以外の男……梶に手を握られたことはある。保健医と一緒に寝たこともある。
だけどこれほど嫌悪感を抱かなかったし、これほど怖いとも思わなかった。
そう―――
怖かったんだ。
「―――で、あるからして……」
説明を終えた水月が振り返る。
やだ―――…見ないで!
我慢できずにあたしが席を立とうとした瞬間。
バサッ!
大きな音がして、ノートが久米の頭を直撃した。



