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アフロテディ、ゆずは気に入ってくれるかな…
頭のぼんぼんが取れたら、くっつけてあげなきゃ。
そしたらまた引きちぎるよね。見た目に寄らず激しい女だから、ゆずは。
なんてことを思いながら、あっという間に3限目を迎えた。
3限目まで久米に、これと言って目立った動きはなかった。
いつも通り騒がしい教室の中で、大人しく授業を受けている。
ただ―――時折隣をちらりと見ると、久米が意味深に笑ってこちらを見つめていた。
刺すような視線に、あたしは無表情で返した。
3限目、その授業は―――数学。
理由がなくても水月を見つめていられる時間。
あたしは教科書を開いて、水月が教壇に立つのを眺める。
いつもは寝てるのに、今日は真剣。
「教科書62Pを開いてー」
柔らかい声があたしの脳内まで響いて、あたしは言われた通り素直に教科書を開いた。
「ね、鬼頭さん」
隣から机の端をトントンと叩かれ、あたしがゆっくりと顔を上げると、
「教科書忘れたみたい。見せてくれない?」
久米は悪意のなさそうなにこにこ顔であたしに笑いかける。
でも、騙されるな。
「悪いけど、向こうにいって」
あたしは久米の反対側を見た。
久米の反対側は梶と仲がいい男子で、いかにも不真面目そうなヤツだった。
授業を真面目に聞くタイプには到底思えないけど、あたしの神聖な時間を邪魔されちゃたまったものじゃない。
「久米くん、教科書忘れたんならあたしの貸してあげる。あたしは隣の子に見せてもらうから」
と乃亜が助け舟を出して教科書を差し出してきたけれど、久米はじっと乃亜の顔を見つめると、
「ありがとう。でも、鬼頭さんに見せてもらうから大丈夫だよ」
と笑った。



