あたしが開いたままの扉をノックすると、梶と明良兄は揃って顔を上げた。
「寝てなかったの?」そう聞くと、
「お前こそ」と明良兄が苦笑を漏らして、グラスを掲げる。
ロックグラスに入った琥珀色の液体を見て、あたしは顔を歪めた。
「中身はただのウーロン茶だ。何かあったとき困るだろ?」
「そうゆう状況にはなってほしくないっすけど」
と梶が唇を尖らせてソファに深く背を預ける。
あたしはカーテンのかかっている窓の方を見た。
羽織ったパーカーのポケットからケータイを取り出すと、あたしは二人の前に置いた。
メールの画面を覗き込みながら、二人が同じタイミングで目を開く。
「これ……」
梶が表情を険しくさせてあたしを見上げてきた。
「ようやく仕掛けてきたってわけだな」
明良兄が険しい表情で顎に手を当て頷く。
「この数日間の沈黙が何だったのか…でもきっと犯人側に何かの都合が合ったに違いないよ」
あたしが無表情に返すと、梶は困ったように眉を寄せて、
「どうするんだよ…久米の問題だってあるし…」
なんて弱気な発言だ。
「とりあえず久米を探る。違うにしても、そうだったとしてもあいつの問題を片付ける」
あたしは決意を固めたように、
誰を見るわけでもなく、宙に視線を投げかけた。



