その夢であたしは夢の深さと同じぐらい、深い森の中を彷徨っていた。
どこへ行くという目的さえなかったけれど、あたしは暗い闇のような木々の間を必死に走っている。
裾の長い……ドレスのような衣服が足元に纏わり付き、急ぐ足を阻む。
息を乱し、前を急ぎ―――時折あたしは後ろを気にするよう振り返った。
振り返っても暗い闇しかないのに。
それでも誰かの気配を感じて、そしてそれに追われているかのように、あたしは先を急ぐ。
暗い森の中に突如霧が立ちこめ、あたしは足を止めた。
ひやりと冷気が肌を刺し、大気ごと沈むような濃密な霧が足元に絡まってくるようで、あたしは一歩足を後退させた。
「ボクの白雪姫。やっと見つけた」
背後で男の声がして、黒いマントのような衣服にすっぽりと身を包んだ誰かが森の木々からちらりと見えた。
ぎくり、として目を開くとゆったりとしたフードをその人物がゆっくりと脱いだ。
―――!!
――――ヴーヴー…
すぐ耳元で鈍い音が響き、あたしははっと目が覚めた。
ケータイが鳴ってる……
頭の中ではそう認識しているのに、体を動かすことができなかった。
まるで金縛りにあったように、ただただ目を開いていると、
すぐ近くに乃亜の可愛い寝顔があって―――そこでようやくこれが夢じゃないことを悟った。
あたしは乃亜を起こさないよう、そっと起き上がると枕元に置いたケータイを開いた。
ケータイはメール受信で、開いてみると
“ボクはやっと自由だ。これから君だけを追いかけて、君だけを見つめられるよ”
あたしは息を呑んだ。



