赤とオレンジの微妙なコントラスト。
光の反射までもが、あの絵を忠実に再現していた。
美しい空……と思う反面、そのありえない美しい色が薄気味悪かった。
クスクス
ふいに森の奥で少女が笑う声が聞こえて、僕は視線を戻した。
木々の間を縫って、黒っぽい裾がひらりと揺れる。
「―――あたしの王子さま…見つけて、あたしを」
歌うような軽やかな声。独特のリズム。
雅―――…?
僕は森の中を歩いた。
「早く。捕まえてくれなきゃ、どこかへ行っちゃうよ?」
声は幼さを残しているのに、まるで挑発されているような、色っぽい笑い声に僕の足は速まった。
目の前を黒い裾がひらりと横切り、僕は腕を伸ばした。
少女の腕を掴んで振り向かせると、
「捕まっちゃった」
黒っぽいドレスに身を包んだ、
雅―――が振り返り―――赤い唇に僅かな笑みを浮かべた。
「雅、会いたかった…」思わず彼女を抱き寄せると、
芳しいヒプノティックプアゾンがほんのり香ってきた。
「あたしもだよ、水月」
雅は僕の背中に腕を回すと、ぎゅっと抱きしめてきた。
柔らかいその感触に目を細めると、雅は僕の腕の中で、
「魔女が来る―――…」
低く声を漏らした。