「しっ!声が大きいよ!!」


僕はまこを睨み上げながら、慌ててまこの口を塞いだ。


まこは僕の手を退けながら、


「早まるな!相手はあの悪魔だ」と至極真剣な目で、僕の両肩を力強く揺すった。


悪魔……って…


まぁ、まこは色々雅に痛い目に遭ってるから…


それでも最近は口喧嘩しながらも、仲良くやってるように見えるんだけど。


それは僕の気のせい??


僕はまこの骨ばった大きな手を肩から離した。


僕は一年ほど前まで……この手がすごく好きだった。


今でも好きだけど、それとはちょっと違う意味で。


前はこうされるたびに、ドキリと心臓が跳ね上がって、どうしようもないぐらい僕の中で心臓が暴れまわっていたのに…


今はあの激しかった感情が凪いで、嘘のように穏やかだ。


「今すぐってわけじゃないよ。彼女が卒業したら…ってこと」


僕はため息を吐くと、声のトーンを落とした。


喫煙スペースには僕たちしかいないけど、誰かに聞かれたらマズイから。


「卒業したら…って、まぁそれなら問題ないだろうけど。でも、あの悪魔との結婚を考えるのはまだ待て」


まこは掌を僕に向けた。


「何でさぁ」僕が面白くなさそうに唇を尖らせると、


「あの悪魔と結婚してみろ!?お前、歌南(カナ)のように一生尻に敷かれるぞ!」


あ、ちなみに歌南ってのは僕の姉さんです。


まこは昔姉さんと付き合ってたことがある。


姉さんは超!我侭で、意地悪。僕は小さいころからいびり倒されてたってわけ。


そんな姉さんと雅を一緒にするなよ!


って即答できない僕……


今でも雅と喧嘩すると、彼女には絶対勝てないんだよね。