「何言ってんだよ!寝言は寝て言えっ!!」
梶が怒鳴り声を上げ、久米をあたしから引き剥がすとあたしは、はっとなった。
久米の深い漆黒の瞳に見つめられて―――意思どころか、魂ごと根こそぎ奪われるような錯覚に陥った。
そんなこと―――できるはずもないのに……
でもこいつ―――ちょっと怖い……
「あんた、あたしが好きなの?」
あたしは今度こそ梶の背後に隠れると、探るように目を上げた。
「そりゃもちろん、大前提だよ。
俺は君が好きだ。何をしても手に入れたい―――」
久米の瞳が和らいで、あの吸い込まれるような瞳の奥が一瞬だけ悲しそうに揺らいだ。
だけどそれは一瞬で、すぐに妖しい光を浮かべてまたうっすらと笑う。
「何をしてもね。
この写メ、学校にバレたら大変なことになるよね?君は退学。先生は辞めさせられるかもしれない。
バラされたくなければ、俺の言う通りにした方がいいよ?」
久米がケータイの画面にチュッとキスをして、挑発的にあたしを見てくる。
その仕草がクサイとは感じずに、妙にサマになってるのが悔しかった。
「すぐに、とは言わない。一週間…そうだな遅くて十日間あげるよ。
その間にじっくり考えて?お互い一番いい取り引きをしようじゃないか。
君が応えてくれるのなら―――俺は、自分のことを話すよ?悪い話じゃないと思うけど」
楽しそうに笑う久米の姿を見て、あたしは唇を噛んだ。
十日。十日で、答えを出さなきゃならない。
だけどやられっぱなしなあたしじゃない。
忠告したはずだよ?ただじゃおかないって―――
舐めんなよ。



