「この―――似非王子。大した役者だよ。あんたは」
思わず皮肉って笑うと、久米はおかしそうにちょっと笑った。
「君ほどでないと思うけどなぁ」
「あんた―――何者なの?」
あたしが笑顔を拭い去り、低く問いかけると、久米はまたも低く笑った。
「知りたいんなら教えてやるよ。その代わり―――」
言って久米はわざとらしくちょっと考える振りをした。
口調まで変わってる。こっちが本性ってわけ?
そんなことを考えていると、久米が一歩足を踏み出した。
思わずあたしは一歩後退すると、梶があたしの前に立ちふさがった。
「お前っ!鬼頭をどうするもりだよ!!お前、鬼頭をストーカーしてるヤツなんだろ!?」
梶が大声で怒鳴って、あたしを庇うように両手を広げる。
「梶……」
「ストーカー?さぁ何のことやら」
久米が楽しそうに笑ってあたしたちの方に近づいてきた。
「鬼頭…逃げろ……」
梶が少しだけ振り返ってあたしに耳打ちする。
確かにこの状況は異常だと言える。久米がストーカーでないにしろ、こいつが纏うオーラは普通じゃない。
姿は普通の高校生なのに、ただの男子高生が纏う雰囲気ではない。背後で渦巻くのは巨大な負のオーラ。
怒っているようであり、でもそうではない。
愉しんでいるようであり、でも心から笑ってない。
何なの―――こいつ………



